マーケティングから広がるソーシャル・ビッグデータ活用の可能性
【ホットリンク様インタビュー】


ホットリンク様インタビュー

ソーシャル・ビッグデータを駆使して企業のインターネットマーケティングを支援する株式会社ホットリンク。Twitterやブログなどといったソーシャルメディアから収集したビッグデータの分析ツールや、リスクモニタリング(風評監視)ツールを提供している。2013年12月には東証マザーズへの上場を果たし、ますますその動向や成長に注目が集まっている。

今回は、同社の二大サービスと言えるソーシャルメディア分析ツール「クチコミ@係長」とソーシャルリスクモニタリングサービス「e-mining」の現状の話題を皮切りに、同社の強みや今後の事業展開について、取締役COOの成瀬功一郎様にお話をうかがった(以下、敬称略)。

攻めの「クチコミ@係長」と守りの「e-mining」

椎葉:コーポレートサイトを見ると、事業コンセプトとして「ビッグデータ」「ソーシャル」「クラウド」と、これでもかというくらい旬なトピックが並んでいますね(笑)。現在の主力サービスとしては、クライアント企業にとって攻めのソーシャルメディア分析ツールである「クチコミ@係長」と、守りのソーシャルリスク対策ツール「e-mining」ということになるかと思いますが、これらのサービスの概要や状況についてうかがえますか?

ホットリンク 取締役COO 成瀬 功一郎様
ホットリンク 取締役COO 成瀬 功一郎様

成瀬: 今、我々が提供しているクラウドサービスの製品は、主にマーケティングのドメインで利用されています。リスク管理などは、IRや広報、PRの領域にもかかってきますが、基本的には広義でのマーケティングのドメインと考えています。市場調査や顧客サポートでは聞けないような、例えばコールセンターにかかってこないようなサイレントマジョリティの声を聞くところを弊社のサービスで実現しています。

「クチコミ@係長」を利用する顧客というのは、TV CMをやるような、大きな広告宣伝費を持っているBtoCの会社や広告代理店がメインで、想定マーケットとしては1500社程度です。「e-mining」の方は、顧客の約半分が上場企業で、それに相当するような規模の大きい企業や炎上事件を起こしてしまった会社などにもご利用いただいています。マーケットとしては、上場企業すべての4000社近くと、未上場だけれども生活者の声に耳を傾けないといけない企業を併せると、少なくとも5000社くらいはあると思います。それに対して、現在の累計導入数は1600社程度なので、「まだまだ新規事業です」「スタートしたばかりです」と言っています(笑)。

私自身は2007年6月にホットリンクにジョインし、2008年のはじめからクラウドサービスにフォーカスすることを当時の経営チームでジャッジしました。そこからクラウドサービスの売上が伸び、昨年末で10億円程度になりました。それでも、まだまだポテンシャルがあるということで市場では高い評価を得ているのだと思います。

「クチコミ@係長」の方はホットリンクがスタートさせたサービスですが、「e-mining」の方はもともとガーラバズという会社のサービスで、縁あって2012年6月よりホットリンクとガーラバズは一緒になりました。実は、このサービスは2000年に始まっており、当時オプトに所属していた私も立ち上げに携わったという経緯がありました。

椎葉:そうだったんですか。もともと成瀬さん個人としても関係ある思い入れのあるサービスだったわけですね。

成瀬:はい、「e-mining」には非常に強い思い入れがあります。サービス開始時は、Twitterもブログもまだ存在せず、2ちゃんねるの監視ツールという位置付けでした。その後、なかなか思うように事業が伸びない時期もありましたが、その理由は「クライアントから見て結局何のサービスなのかわかりにくい」という状態だったからだと感じました。

ガーラバズ社の株式を100%取得し、合併するまでの最後のガーラバズ社長として私がやったことはたった1つだけで、「これはリスクモニタリングに特化したサービスで、これからますます需要が伸びるサービスなんだ」と定義しただけなんです。ただ、それをきっかけにメンバーたちの意識も切り替わったと思いますし、顧客数も順調に増えていきました。「クチコミ@係長」との役割分担も明確になりました。

実は、昨年は「e-mining」の方が「クチコミ@係長」よりも顧客数が伸びました。夏頃に、不適切な画像をアルバイトがTwitterなどにアップして店舗閉鎖に至ってしまうというような「バイトテロ」と言われる事件が多数発生し、そのような目に遭った会社の株価が下落するなどもあり、ソーシャルリスクというものにかなり注目が集まったことなどが背景にはあると考えています。

圧倒的な量のデータとビッグデータテクノロジーが強み

椎葉:ホットリンクさんの強みとなっているのは何でしょうか?

成瀬:一番のはっきりした強みは、様々なソーシャルデータに絡む利権を保有していることです。Twitterに関しては、日本企業で唯一、全言語、全期間のツイートデータをリセールできるエージェンシーになっています。ブログの場合は、誰でもデータの取得は可能ですが、2006年11月から主要ブログポータルの記事を、すでに無くなったブログサービスも含めて、蓄積してきました。2ちゃんねるについては、2006年11月以降、すべての投稿記事がデータベース化されていて、かつ独占的な商用利用権を有しています。

さらに、Yahoo!知恵袋、教えて!goo などのQ&Aサイト、専門的なBBSも網羅し、TVのメタデータや、インターネットのニュースポータルも200ほどカバーしています。検索のクエリ数もパートナー企業から供給を受けています。企業のマーケティングに必要なデータをこれだけ網羅的に供給できるということが、ホットリンクの圧倒的な強みの1つとなっています。

技術的な話では、ビッグデータテクノロジー、大量のデータを収集し瞬時に解析して数秒でアウトプットを返すといった技術を駆使しており、日本企業で唯一米国のsalesforce.com社から技術パートナーとして出資を受け、彼らの商品へ組み込まれています。そういう高い技術力を持ったスーパーエンジニア集団です。また、全世界の金融トレーダーが利用するBloombergの“Bloomberg App Portal”上でアプリを世界に向けて販売している唯一の日本企業です。

高収益、高成長を支える組織づくり

成瀬:見えない強みという点で言うと、私が最も力を割いて取り組んできた活動は営業活動ではなく、組織づくりです。創業社長の内山は天才肌の研究者タイプで、2000年頃からこういうソーシャルサービスが普及した世界をイメージして、世界をアッと言わせる会社をつくろうとやってきたのですが、いかんせんそれを実行できる組織能力が追いつかない。そこをこつこつと5年以上かけて、仲間たちと創りあげてきました。

ベンチャー企業というのは、大きな夢はあるけれども組織能力が追いつかない。いかに組織能力を高めるかということにフォーカスしてきた結果、非常に高収益で成長性の高い事業とそれを支える組織ができてきたと言えると思います。外からは見えにくい強みなので内緒でお願いします。(笑)。

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スペースシップ代表 椎葉 宏

椎葉:本当の強みというのはそういうところにあることが多いですよね。時間がかかるのでそう簡単にマネできないし、またマネしてみてもまったく同じようにはできないですしね。

成瀬:そうですね。2010年にやっとクラウドサービス事業の月額利用料収入だけで黒字化し、その時期から教育に投資するようになりました。ほとんどの技術開発に強い会社というのは、だいたいプロダクトアウト型で、マーケットイン型の発想が不足しています。しかし、そういう会社はセールスとエンジニアの会話が成立しません。当時のホットリンクにもそういうところがありました。そこで、エンジニアも含めてマーケティングや戦略に関する教育を徹底して行い、社内の議論レベルを少しずつ上げてきました。その結果、きちんと市場にマッチする製品になってきたと考えています。

蓄積したデータを応用することで生まれる爆発力

椎葉:データを持っていることとそれを応用する力が掛け合わされる時には、一般的なBtoBのマーケティングベンダーとは違う爆発力がありますね。マーケティングの話からかなり広がってきましたが(笑)、ビッグデータの領域での他のプレーヤーとの関係はどのようになりますか?

成瀬:「ビッグデータ」と呼ばれている領域には、非常に様々なレイヤーがあります。データそのものをビッグデータ領域と言う人もいますし、ビッグデータを扱うためのITインフラをビッグデータ領域と言う人もいます。また、ビッグデータを分析するエンジンがビッグデータビジネスだと言う人もいる。アプリケーションだとかナレッジだとか、様々なプレーヤーがいるのですが、レイヤーごとにそれぞれの強いプレーヤーがいて、顧客企業側から見ると誰に何を頼んでいいのかわかりません。

ビックデータ市場におけるソーシャル・ビックデータ
ですので、我々はソーシャルという分野に特化することによって、この5つのレイヤーをすべてワンストップで提供するという独自のポジションを築くことができたんですね。それを事業レベルに展開すると、データから、ITインフラ、分析エンジン、そしてアプリケーションまでクラウドサービスで提供しますというモデル、API経由でデータベースやエンジンを提供するモデル、そしてコンサルティングサービスという、3つの提供モデルになります。

椎葉:さすがにナレッジはクラウドでは提供できないので、ここを人によるコンサルティングサービスとし、システムとの間を埋めることによって「クチコミ@係長」や「e-mining」をさらに活用していただくということですね。

政治、金融、報道――様々な領域に拡大するソーシャル・ビッグデータ活用

椎葉:昨年上場されて、次のステージに移っていると思います。今後の展開について聞かせください。

成瀬:まず、ソーシャルメディアが普及したということがどういうことかということについての我々の考え方をお伝えします。ソーシャルメディアには、人々が思っていることや見たことをたくさん投稿しているので、リアルな世界が投影されていると考えています。そして、それを宇宙の衛星から俯瞰しているような技術を我々は実現したと捉えています。

ソーシャルメディアの普及の意味
先ほどからの話の通り、主にマーケティング領域で活用がスタートしたのですが、実は政治の世界などでも活用は進んでいます。昨年の参院選の時には、参院選用のソーシャルデータベースをつくって、そのデータを活用するためのダッシュボードも提供しました。某大手政党は前日に行った街頭演説などの反響を分析してすぐその日の演説に反映させるというようなことを、かなり科学的にやっていたと聞いています。

椎葉:ネット×政治というのは騒がれてはいるものの、まだまだ日本ではこれからと言われていますし、伸び代がありそうですね。他の分野ではどうですか?

成瀬:金融の分野でも動きがあります。なかなかまだ事業として確立するレベルまでは到達していないのですが、先ほど話したようなブルームバーグ上のアプリ販売は昨年から行っています。

それから報道ですね。「データジャーナリズム」という言葉がアメリカなどでは一般的に使われるようになってきていて、日本でも、我々がソーシャルデータを使って、今どうなっているのかという集計結果を提供し、それをもとにテレビ局が番組構成をしていくといった流れができつつあります。本格的になるにはもう1、2年かかるとは思いますが。

以上のように「ソーシャル・ビッグデータ×〇〇〇」の対象市場はますます拡大しています。さらには、IOT(Internet of Things)という言葉があるように、例えば、自動車とか冷蔵庫とか電子レンジも、これからはインターネットに接続されたデバイスになっていきます。そうなると、さらに様々なソーシャルデータが活用されるという流れになってくると思います。

椎葉:今日は、マーケティングソリューション企業ということでホットリンクさんにインタビューしに来たのですが、こうやってうかがっていると、ソーシャル・ビッグデータの活用は、他の領域にも次々に広がっていくわけですよね。そのような状況の中で、ホットリンクさんとしては、国内での他領域の展開と、マーケティング領域でのグローバル展開とで、どちらが先なのでしょうか?

成瀬:他領域への展開を実現するためには、パートナーシップが非常に重要になってきます。すでにそれぞれの領域に強いいわゆるエンタープライズソフトウェアのベンダーが数多くあります。TV、飲食チェーン向けの基幹システム、テキストマイニング、BI、CRMなどといった領域のベンダーと積極的に連携し、我々自身は今までのツールベンダーから、ソーシャル・ビッグデータのクラウドプラットフォームベンダーへと変化していきます。一言で言うと、ソーシャル・ビッグデータを活用するエコシステムをあらゆる産業でつくっていくということです。

また、これと同じようなことが当然アジア圏でも数年後には起きてきます。ただし、日本とはまたちょっと異なるエコシステムができつつあるので、まったく同じモデルでは上手くいかないだろうとは思っています。

椎葉:マーケティング領域でもまだまだ拡大の余地がありそうですが、他の領域での可能性も無限にありそうですね。今後のホットリンクさんの展開に注目したいと思います。本日はどうもありがとうございました。

website
株式会社ホットリンク
【事業内容】
ソーシャル・ビッグデータ活用を支援するクラウドサービスの提供(ソーシャルクラウドサービス事業)

  • クラウドサービス
    – クチコミ@係長
    – e-mining(イーマイニング)
    – Order Book Tracer(オーダーブックトレーサー)
  • ソリューション
    – クチコミ@係長API
    – ホットリンクコンサルティング
  • レコメンド
    – レコナイズ


インタビューアー:椎葉 宏、執筆:中澤 始、写真撮影:北村 健

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