世界を見据えてのQuestantの事業展開
【マクロミル様インタビュー】


マクロミル様インタビュー

日本におけるネットリサーチ分野のパイオニアである株式会社マクロミル。2000年の設立から2004年にマザーズ上場。その後、2005年に東証一部に市場変更。当時、東証市場最速での一部上場を果たした。韓国・中国にも事業を展開し、今後さらなるグローバル展開を計画。そんな中、2013年10月にはセルフアンケートASP「Questant(クエスタント)」をリリースし、今後の動向に注目が集まっている。

今回はセルフアンケートASP「Questant」を中心に、今後の事業展開について、代表取締役副社長の小西克己様、DIYサービス準備室室長の荒川徹様に、スペースシップ代表の椎葉がお話をおうかがいした(以下、敬称略)。

Questant誕生の背景

椎葉:昨年2013年にセルフアンケートASP「Questant(クエスタント)」をリリースされましたが、今回はこのQuestantを中心にお聞きしたいと思っています。このQuestantのリリースに際して、SurveyMonkeyなどのグローバルの動向や国内のネットリサーチを取り巻く環境の変化などがあると思うのですが、リリースの背景をお聞かせいただけますか?

マクロミル DIYサービス準備室室長 荒川 徹様
マクロミル DIYサービス準備室室長 荒川 徹様

荒川:10月31日にQuestantの無料版をリリースして、11月25日に有料版をリリースしました。Questantですが、わたしが2012年10月に経営戦略室というところに異動になり、代表の杉本から「DIYのサーベイの可能性はどうなっているのか?他社と組むのか自社で開発するのか、検討して欲しい。」と言われたところから始まりました。何もないところから始めたのですが、まずはマクロミルの取引先にアンケートをとりました。すると、「営業を介さず、思い立ったときにすぐアンケートを実施したい。」という即時性へのニーズが高かいことがわかりました。その当時すでにSurveyMonkeyをはじめ国内にもセルフ型のアンケートツールはありましたが、自社の顧客リストのような大事な情報を預けるには抵抗感があるという結果が出ました。ニーズはあるのに、それに応えられる状況がないということがわかりました。

椎葉:システム開発についてはどうされたんでしょうか?

荒川:自社での開発となると時間がかかるので、他社からのアライアンスのお話をうかがったのですが……。まず海外のツールですと日本で求められるレベルの調査票にはならないかと。

椎葉:日本だと細かいカスタマイズが要求されますからね。

荒川:そうなんです。少し色を変えたいとか印刷をきれいにしたいといったような要求に応えられる海外のツールが残念ながらなかったんです。国内のツールに関してもリサーチしましたが、信頼性や市場の受けも考慮すると、マクロミルで独自にシステム開発をしていく方が良いのでは、ということになりました。

Questantの一番の武器は、初心者でもわかりやすいUI設計

スペースシップ代表 椎葉 宏
スペースシップ代表 椎葉 宏

椎葉:QuestantはセルフアンケートASPということですが、特長や他社との差別化ポイントについて教えてください。

荒川:サイトでもご案内をしていますが、マルチデバイス対応ということで、スマートフォン、タブレット、PCでアンケートに回答できます。回答者の使い勝手をかなり意識しており、実際にカットオーバーしてからもお客様に評価いただいているところです。これから他社の追随が始まると思いますが、まずは先にこの対応をしたことが大きいと思っています。さらに2014年2月3日には、アンケート作成から結果のチェックまでを、スマートフォンを使ってできるようになりました。これまで、PCを立ち上げてアンケートを作成するというのが一般的でしたが、思い立ったときにすぐにスマートフォンでアンケートを作って配信するという世界をつくりました。今後も回答者の使い勝手について追求していきたいですね。

PCでの回答画面
スマートフォンでの回答画面

荒川:他に、UIに関してですが、アンケート結果のところで特にわかりやすい、使いやすいというお声をいただいています。例えば”性別”や”年代”といったアイコンをドラッグ&ドロップするだけで瞬時にクロス集計ができる点は特に高評です。また、アンケート作成時にテンプレートが選べるのですが、マクロミルのテンプレートということで信頼度が高いようです。社名や商品名などの必要な部分だけを入れ替えてアンケートを実施しているという方が多いことがわかっていますので、今後はこのあたりも重点的に改善していきたいですね。

Questantのテンプレート選択画面
テンプレートを用いたアンケート作成

既存事業とのカニバリゼーションに対する懸念

椎葉:既存事業との棲み分けも気になっているのですが、どうなんでしょうか?

荒川:当初は国内のネットリサーチ事業とのカニバリゼーション(※)も懸念事項として挙がっていたのですが、実際にカットオーバーしてみるとあまり問題はないですね。「人に相談しながらアンケート設計をしたい」というニーズと「簡単にアンケートを取りたい」というニーズの違いが顕著になっていると思います。

※カニバリゼーション=自社の2つ以上のサービス、商品が、シェア争いをし、共食い状態となること。

我々の既存のお客様とQuestantがきっかけでマクロミルを知ってくださった方の内訳が出てきていまして、1月の上旬時点で既存のお客様が6割、Questantがきっかけのお客様が4割になってきています。個人事業主の方や学生が増えてきていますね。Questantがきっかけとなったお客様を見てみると、最初は都市部が多かったのですが、地方に広がり始めています。Questantの導入セミナーでも、地方からの参加率が非常に高いです。

椎葉:Questantはまさに新しい顧客層の開拓という役割を全社的に担っているんですね。新規顧客開拓につながっている要因として、戦略的な料金設定というのがあると思います。質問数・回答数に制限がある無料バージョンを用意されており、また通常プランもかなり低料金で提供されています。競合も意識されているのでしょうか?これだとかなり量的な展開が必要かとも思うのですが、そのあたりの営業戦略というかマーケティング戦略も今までとは違ってくるのでしょうか?

荒川:マンパワーでどうこうできる世界ではありませんので、ウェブのプロモーション施策や大規模セミナーなどでお客様を加入に導いていく方法が求められると思っています。あとはアライアンスや代理店制度を整えていく必要がありますね。

Questantが目指すところ

椎葉:今後展開されていく上での方向性や目標について教えてください。

荒川:“マーケティング・ダッシュボード”という計画があります。QuestantはセルフアンケートASPに止まらず、さまざまなデータが事前に読み込まれていたり、マクロミルのネットリサーチモニタのアンケート結果が見られたり、インフォグラフィックスでもっとビジュアライズされたデータが見られたりということを想定しています。困ったときにQuestantを立ち上げれば、日々のマーケティング情報が手に入るっていう世界を目指しています。まずはこの1年間でそのベースができてくると考えています。

椎葉:市場における自分の立ち位置や、他社と比較してどうなのかというところがわかるということで、ユニークなダッシュボードになりそうですね。

荒川:エクセルデータとか手付かずのデータが企業様にはたくさんありますよね。それをQuestantにアップロードすればビジュアライズされて見ることができるということへのニーズも非常に高いと思っていますし、新たに調査をしなくてもデータをシステムで可視化することで、担当の方には考える時間や意思決定をする時間に使ってもらいたいと思います。

椎葉:システムができることはシステムで提供をして、人がやるべきことは人が提供する。そして、社内の担当者には社内でしかできない部分に時間を使っていただいて、ということですよね。

荒川:アメリカだと、従来のコンサルティング会社、調査会社がその辺の変化に対応できていなくてどんどん統廃合が進んできていると言われています。日本も2~3年以内にはそういったトレンドになるかと思います。Questantでも、システムはシステムで提供しつつ、人のところもしっかり育てて、システムと人を両立させていく形にしたいですね。

非上場化がQuestantに及ぼす影響

椎葉:ベインキャピタルからのTOBを受け入れて非上場化することが公表されていますが、Questantという事業に関してはどういう影響があるのでしょうか?

マクロミル 代表取締役副社長 小西 克己様
マクロミル 代表取締役副社長 小西 克己様

小西:非上場化することとパートナーがベインキャピタルということと2つあるのですが、まず先にパートナーがベインキャピタルであることについてからお話します。彼らはSurveyMonkeyの初期の頃に投資を行い、すでにエグジットしているのですが、非常に大きな企業価値まで成長させました。その際、戦略的アドバイスを行っていたので、そのあたりのノウハウが活かせるのではないかと考えています。パートナーとして、セルフ型のアンケートシステムを世界展開させたという実績があり、そのノウハウを得られるという点は非常に大きいです。

もうひとつ、株式の非公開化・非上場化というところに関しては、もともとQuestantに限らず、マクロミルの次の成長に向けて短期的な売上利益にこだわらず、将来また新たなイノベーションを起こすための積極的な投資をしていくということが狙いです。その投資については、国内においての事業展開もあれば、グローバル展開においてもあります。

椎葉:Questantに限って言えば、言語を変えれば世界中で使えますからね。

小西:グローバルに展開するにあたって、資金面も考慮しないといけないですね。たとえば、SurveyMonkeyが弱いアジア圏、本丸である北米などで勝負していくにも投資が必要になってきますから、そういう意味でも今回株式の非公開化・非上場化をすることで、グローバル展開を加速していくことが可能になってきます。その先陣としてQuestantが大きな役割を果たすことになると思っています。

椎葉:すでにマクロミルさんは、中国や韓国に進出されていますよね。

小西:はい。韓国に関しては、ジョイントベンチャーで立ち上げましたが、そこも少し苦戦しています。韓国リサーチ業界のNo.1であったエムブレインという会社の株式を51%取得、統合し、現在のマクロミルエムブレインとなっています。

一方で中国は完全にスクラッチで立ち上げてから2年経過しました。今は売上が2億円程度で、利益がぎりぎり出るくらいですね。まわりからは中国でスクラッチで始めて2年で黒字化はすごいとは言われますが、我々が当初目指していたものとは違っています。まだまだという感覚ですね。韓国、中国は今後他のアジアの国々に展開していく際のモデルケースにもなっていくかと思います。

椎葉:今後は他のアジアの国々にも次々に進出する予定でしょうか?

小西:中国を中心にしてアジアで市場を作るっていうことが優先度は高いかなと今は思っています。でも欧米には明確な顕在市場があるので、どちらを選択するのかというところですね。Questantに限って言えば、既存のセルフアンケートASPの料金がもともと高いものではないので、そこからのリプレイスとなると、料金だけではない他の武器が必要になってくるかと思います。欧米市場とアジア市場、両マーケットの動向を踏まえてすばやく判断をして行きたいと考えています。

椎葉:Questantはマクロミルさんにとって非常に重要な位置付けなんですね。今後グローバル展開を本格的に行っていくにあたって、人が付いてアンケート設計から一緒にやっていくモデルでは、ローカライズが大変でしょうね。

インタビュー風景
インタビュー風景

荒川:そうですね。海外のリサーチ会社は、リサーチャーと呼ばれている方でもドクターの資格を持っています。いわゆる専門家集団ですね。マクロミルの場合だと、営業やリサーチャー、アナリストなどに分業化されていて、そういったモデルは海外にはないです。なので、そのようなモデルをやろうとしても難しいところがあります。

一方で、サービスの展開という観点で見れば、戦えるかなと思います。現在他社のセルフアンケートASPを利用されている方たちからもQuestantは使いやすいというお声はいただいていますので、他社のセルフアンケートASPの良いところはもちろん参考にしつつ、マクロミル流のサービスを展開させていきたいと思います。Questantを海外で展開する際には、使い勝手の良さや細かいところへの気遣いなど「さすがmade in Japanだ!」と言われるくらいまで仕上げていかないと海外での展開は難しいでしょうね。

あと、今後の海外展開のキーワードとして、マルチデバイス対応が挙げられます。アジア圏ではPCを飛び越えてタブレットやスマートフォンが普及していますので、他社より先に各国の事情に即した形で出していければと思います。

椎葉:Questantを先鋒としたマクロミルさんの今後の世界展開、とても楽しみにしております。本日はどうもありがとうございました。

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株式会社マクロミル
【事業内容】

  • インターネットを活用した市場調査(ネットリサーチ)
  • 携帯電話を利用した市場調査(モバイルリサーチ)
  • 世界各国の消費者を対象にした海外市場調査(グローバルリサーチ)
  • 消費者購買動向調査および購買動向データの提供(QPR™)
  • ネットリサーチ専用ASPシステムAIRs(Automatic Internet Research System)の提供
  • リサーチの企画設計・集計・分析サービス
  • その他リサーチサービス(定性調査など)およびマーケティングに関するコンサルティング業務


インタビューアー:椎葉 宏、執筆:菊池 紀美乃、写真撮影:北村 健

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